お問い合わせ プレゼントコーナー出品希望 送付先変更・送付中止 年間購読のお申し込み APA GROUP NEWS 馳 浩の永田町通信 BIG TALK Apple Town TOP
藤 誠志 エッセイ 〜社会時評エッセイ〜 2006年6月号
Back Number
藤 誠志
 今年に入ってゼネコンの落札価格が急落している
 4月14日付けの朝日新聞朝刊の一面に、“ゼネコン落札価格急落”というタイトルの記事が掲載されている。“国土交通省発注の大型工事をめぐり、ゼネコン大手四社(鹿島、大成建設、大林組、清水建設)が参加した入札の平均落札率が、今年に入って急落していることが朝日新聞の調査でわかった。予定価格に対する落札価格の割合で、昨年4〜12月は99〜95%で推移していたが、2月に90%を切り、3月は80.1%に下がった。四社は昨年末、「談合決別」を申し合わせており、4社の複数の首脳は自由競争の結果であることを認めている”という。
“3月の落札率(80.1%)を年間工事全体に当てはめると、実際より800億円以上節約できたことになる”というのだ。また社会面にも関連記事として、“ダム工事半値落札”という見出しで、さらに興味深い記事が出ている。“3月、業界に衝撃が走った。北海道開発局発注の夕張シューパロダムは総事業費1470億円。その一部「堤体建設第一期工事」の入札で、大成建設が筆頭の共同企業体(JV)が23億7,000万円の最安値提示をした”“予定価格の46.6%。大成側は「独自の技術提案に基づき積算した結果」としている。一方他社の談合担当だった幹部は「たたき合いの結果だ」と語った”そうだ。私から見ると、官から民への発注は、これまですべてが談合だったのだ。ゼネコン大手4社(鹿島、大成、大林、清水)が昨年末に談合決別の申し合わせを行ったのは、1月4日に改正された改正独占禁止法による罰則規定の強化を睨んだもので、その後に摘発された防衛施設庁の官製談合による逮捕を予感してであり、官製談合は今急速に崩壊している真っ最中だ。
TOP
 戦後の日本は政・官・業の癒着社会だった
 会社を設立して、2・3年の創業期の頃に、私は将来どの事業に積極参入すべきか迷うことがあった。最初に事業参入したのは、注文住宅事業だった。注文住宅であれば、契約金を先にもらって工事に着工、住宅金融公庫などの融資金で中間金をもらい、完成した段階で残りの費用をいただく。そして協力工事業者には手形で支払うことができるので、手持ち資金が少なくてもできる事業だったからだ。しかし注文住宅は様々なお客様の土地に合わせて設計して住宅を建てるわけで、一戸ずつ場所が違い大きさも方位も違い規模も小さい、効率の悪い事業だった。そこで私は総合建設業、つまりゼネコン業に進出しようと地元の公共工事の入札指名願いを提出した。その後幸運にも指名業者に選ばれた。
  ところが指名を受けるとともに同業他社の社長が私の会社にやってきて、落札業者は話し合いで決めるもので今回初めて指名業者に選ばれたのだから、落札を見合わせて談合に協力して欲しいと言われた。私は談合に加担して高値入札はできないと強硬に反発し、談合を無視して適正価格でその工事を落札することができた。しかし発注主の役所の方から、私とともに応札した地域で同ランクの同業他社から、工事保証人を出す条件になっているので保証人を立てるよう指示された。落札したのだから、たかが保証人、誰かがやってくれるだろうと高を括っていたのだが、誰に頼んでも引き受けてくれない。仕方なく、私の地元石川県で最も遠隔地ではあったが、私と連帯感を持ってくれていた県政界の有力者である業者に頼み込んでやっとのことで保証人になってもらい、苦労しながらも、どうにか工事を行うことができた。この入札の際に私が付けた値は、落札するためにかなり思い切った入札価格ではあったが、適正利益を見込んだものであった。それでも今回は叩き合いになる入札とわかって、いつもより控え目に出した二番手業者とはまだ開きがある安値だったらしい。適正価格での発注をしようとすれば、積算資料に基づく建築単価を民間並みにして予定価格を決めれば、すぐに実現できるのにだ。
  全国各地域には、40年以上前から建設業協会と呼ばれるものが必ずあり、どこでも立派な会館が建っている。この協会に加盟する業者は、すべからく談合に加担している。
  そしてその後、いくら指名願いを出しても指名業者に入れてもらえなくなった。理由を関係先に問い合わせると、建設業協会に加盟しなければ指名業者にはなれないのだという。そうであればと、入会金と施工高に応じた高額な年会費を支払って協会に加盟したのだが、それでもなかなか指名を受けられない。同業者に聞くと、入会後は3〜4年間は冷や飯を食うのが当たり前だという。高額な年会費と入会金を払ったのにバカバカしくなり、即座に協会を脱会した。指名願いはその後も10数年に亘って提出し続けていたが、一度の指名も得られず、当たりもしない指名願いを提出するために必要な膨大な書類を作成することが無駄に思え、止めてしまった。それでゼネコン志望から、自分で土地を選定し、買収して開発し、設計・施工を行い、自分で値をつけて自分で販売するデベロッパーの道へと方向転換したのだ。
  思い返してみれば、今日の私があるのも官製談合によってゼネコンへの道を閉ざされたおかげであるとも言える。建設業に参入した業者のほとんどが、地域の建設業協会の差配に従って、予定価格の99.9%という高額受注を繰り返している。夕張のダムの例ではないが、本来なら半値の50%でも利益が出る仕事なのにだ。倍の税金を使っても、選挙の時に票集めをしてくれたり、天下りを受け入れてくれたりする業者は、役所にとっても、政治家にとっても便利な存在だ。こんな談合と天下り、そして金と票とが一体になった政官業の癒着体質が、戦後一貫して日本を蝕み続けてきたのである。そのために日本は、すっかり非効率高物価社会となってしまった。全ての官から民への発注が、官製談合または特命発注によるものであり、発注を受けた業者は政治家に献金を行い、票を取りまとめ、官僚は発注先に天下る。こんなことを50年以上にも亘って繰り返してきた。誰もが知っているこの連鎖を断ち切れなかったのは、第4の権力であるべきメディアの怠慢である。しかし今年の初めに発覚した防衛施設庁による官製談合の摘発をきっかけに、ようやく政官業の癒着体制が崩壊する兆しが見えてきた。
TOP
 超低金利は個人からの強制的な大衆収奪といえる
 冷戦終結とともにバブルの崩壊に見舞われて、1,000兆円を超える資産価値が喪失し、不良債権化した。この不良債権処理のために行われたのがゼロ金利政策だった。日本国民が持つ1,500兆円とも言われる金融資産を考えれば、このゼロ金利政策によって、毎年50数兆円の本来得られる預金金利が個人から金融機関・企業へと移転されて、不良債権処理へと注ぎ込まれたことになる。バブル崩壊から15年にしてようやく、この金利分を投入して不良債権を帳消しにできたが、こうした行為は金融当局による国民からの大衆収奪と言ってよい。この超低金利政策も、日銀の量的緩和政策の解除によって、今、終焉を迎えようとしている。
  4月15日の朝日新聞の経済面には、“景気拡大 バブルと比べると”という見出しで、バブル景気並の戦後2番目の長さになった現在の景気拡大の今後を占っている。“現在の景気拡大を支える中軸は、企業収益の大幅な改善だ。財務省の法人企業統計によると、全企業の経常利益は03年以降、2けた成長を続けている”とのことだが、これは低金利に負うところが大きい。我が社も今期の連結決算で約80億円の利益が出るが、このうち約4分の1の20億円は金利軽減効果益であるともいえる。これは事業家としての私にとってはありがたいと考えるが、超低金利政策により個人から企業へと強制的にお金が移動させられた結果であり、果たしてこんなことを続けていていいのだろうかとも思う。
  非効率で高物価な官僚国家である日本が、バブル崩壊の傷を癒し、さらに成長しようとしている。この原動力は一体何なのだろうか。日本はユーラシア大陸の東端に位置した四方を海に囲まれた島国である。この立地から地政学的な優位性を得ていると言える。単一民族で、他の宗教を認めない一神教でなく無宗教ではと思われるほど寛容な神道と、これまた他宗教に寛容な大乗仏教であり、言語も一つで皆が読み書きできて共通の価値観を持ち、かつ温暖で四季の変化がある暮らしやすい気候・風土に恵まれていること。こんな背景から有史以来二度にわたる蒙古の来襲と、先の大戦における広島・長崎の悲劇のほかには極端な悲劇に見舞われたことがなく、「和を以って貴しと為す」という考え方が人々の中にしっかりと根付いており、その温和な社会システムをベースに繁栄を築きあげてきたのである。この日本・日本人特有の環境・気質がこの国を支える大きな要因であることは間違いないだろう。
  しかしこれだけ経済大国と言われながら、欧米諸国と比べて本来の所得に見合う「豊かさ」が日本人には実感できていない。例えば欧米では年収が5〜6万ドル(約600〜700万円)あればそこそこ金持ちの部類に入り、広い家にゆったり暮らし、別荘を持っている人も多い。同じ年収でも日本ではそんな暮らしは望むべくもない。これからは日本を、所得に相応しい豊かさが実感できる社会にしていかなければならない。そのためには、非効率高物価社会の無駄を大幅にカットしていく必要がある。前述したように、談合を廃止すれば公共工事の発注なら50%とまではいかないにしても、30〜40%程度価格を引き下げても、きちんと管理をしていればほとんど工事に影響は出ない。予算をカットしたこの30〜40%分の資金を使って新しいインフラに投資すべきである。例えば「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」を活用して、東京都心の大深度地下に循環道や横断道を造る。そしてこの工事を競争入札による適正価格でゼネコンに発注するのだ。そのように発注した仕事によってゼネコンの不良債権を減らしていく方が、公的資金の注入を受けた銀行の借金棒引きによって処理を進めるよりも遥かに健全である。また最近2%近くまで上昇したとはいえ、長期金利はまだまだ低い。今このタイミングで超長期の国債を発行して、孫子の代まで償還がかかっても良いから、このような建設する価値があるインフラは造るべきである。豊かさを感じるためのインフラ整備などの公共工事で景気を浮揚させていくべきである。
TOP
 住まい政策の充実によって豊かさの実感を
 無駄は公共工事の費用だけではない。現在総勢6万人もいる都道府県・市・町・村の地方議員をすぐに3分の1に減らしても良いのではないだろうか。WEDGEの羅針盤に投稿された加藤秀樹氏(慶応大学の教授)によると、地方議員に使われている税金は全額で約4,000億円。一人当たりの都道府県議員で日本は2,119万円で、アメリカは400万円、イギリスは73万円と、日本は圧倒的に高額となっている。欧米諸国では議会が夜間や休日に開かれることが多く、多くの議員はボランティアで議会の開催の都度手当が支給される制度で、日本のように職業政治家で家業のようになっているのとは大違いである。さらに小さな政府を志向するには、日本は公務員の数も多すぎる。民間並の効率経営を行えば、人員を半減しても十分に機能するのではないだろうか。小さな政府の実現のために、政府の役割は防衛と外交、教育など重要なことに集約すべきである。中でも最も重要なのは教育であり、教育の目的は日本の民族と歴史に誇りと自信を持たせることに置くべきなのだ。日本文明の元となるのは美しい日本語である。表意文字である漢字だけではなく、表音文字であるひらがなとカタカナを持ち、これらを上手く使い分けることによって、微妙なニュアンスまでを人に伝えることができる。この日本語は世界に冠たる素晴らしい言語なのだ。まずは国語教育を徹底すべきで、小学生からの英語教育などはとんでもないことである。
  日本を豊かさが感じられる国にするもう一つの手は、住まい政策の充実である。現在の租税特別措置法を改正して100m以上の住居に2世帯が一緒に住むのなら固定資産税を2分の1に、3世帯以上で住まうならば3分の一にするなど、税の誘導によって大型住居の購入を促進して、2〜3世代が大きな家を造って住む大家族制度の復活をはかることである。また法人には認めている建物の減価償却を、個人の住宅にも認めて償却期間を大幅に短縮して15年ぐらいの短期にするべきだし、住まいは資産であるとして固定資産税をかけているにも関わらず、消費財であると消費税も払わせるという住まいの2重課税を撤廃するなど、国民の資産形成に有利な税制を導入することで、景気の回復と豊かさの実感を同時に達成することを目指すべきである。
  冷戦が終結してからもう15年、日本は混乱期から第2の上昇期を迎えようとしている。この先かなりの期間に亘って、金利の上昇や資源価格の継続的な上昇が予測される。今、まだ低利のこのタイミングに一日も早く個人の住まいの充実を図る政策を実行することが、将来の日本の経済や社会にとって良い結果を生むこととなる。そして日本がこの先豊かさが実感できる社会、努力した人が報われる機会平等の社会へと進んでいけば、これだけ地政学的にも気候・風土にも恵まれた国であるのだから、きっと素晴らしい国となるに違いない。世界の多くの場所で宗教や民族・国境・貧富の格差が原因となって争いが起こっている。日本はこんな混乱に巻き込まれないように官僚主導の社会主義的国家に別れを告げ、一日も早く独立自衛のできる民主的で真の資本主義で市場経済主義体制を作り、世界から尊敬される国づくりをして世界の平和と繁栄に貢献するべきである。
TOP