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藤 誠志 エッセイ 〜社会時評エッセイ〜 2006年1月号
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藤 誠志
 アジア、西太平洋において君臨を目指す中国の長期地域戦略
 11月11日付けの産経新聞朝刊の総合面に「日中軍事衝突も」という見出しで、米国議会の超党派政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」が九日に発表した年次報告書に関する記事が掲載されている。この報告書では、「アジアや西太平洋で諸国を自国の影響や制圧の下に置く君臨を目指すことが中国の長期の地域戦略」とし、「中国のその戦略の結果として、東シナ海での尖閣諸島への領有権主張と海底ガス田の開発をめぐる争いから実際の軍事衝突にまで進む可能性があると述べ、その背景として、(1)日中両国とも強い民族感情があるため事故や意図せぬ事件が全面的な対決へ発展しかねない(2)その種の事件は中国側による日本の領海や領空への頻繁で攻撃性の強い軍事侵入から起きる公算が大きい(3)中国が石油探査や海洋調査のためだとする調査船、軍艦、軍用機による未確定競合地域への侵入のパターンや問題の多い中国側のガス田発掘作業は紛争をあおっている|と指摘し、紛争の原因は中国側の攻撃性の強い行動にあるという見解をかなり明確にした」としている。また「日本が米国の最有力の同盟パートナーであることを強調、『米国がこの種の日中衝突への当事者となることを避けるのは難しい』として、最悪の事態では日本側につくことを明示した」という。
日本にとって中国が今後脅威となるというのは私も同意見であるが、この報告書にはいくつか疑問点がある。「日中両国とも強い民族感情がある」としているが、果たして今の日本にそんなものがあるのだろうか。もう一つ、アメリカは有事にあたって、いつまで日本の側につくのだろうか。
  金大中、盧武鉉と続いてきた韓国政権は、北朝鮮に対する宥和政策をとり続けてきている。民主主義国家である韓国が、独裁国家である北朝鮮の軍事力や潜在的な核の脅威にすっかり屈してしまっているのは、6カ国協議における韓国の言動を見ても明らかだ。メディアが発達し、インターネットが広く普及した今、民主主義国家、その中でも特に先進国においては国民一人ひとりの命の価値が増大してきている。その結果、独裁国家と民主主義国家が対立した場合、戦争によって犠牲者が出ることを避けるために、民主主義国家の方が屈服することになってしまう。まさに韓国はそうして北の軍門に下ったのだ。そして日本と中国との関係においても、まったく同じことが今、まさに起ころうとしている。
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 国内体制維持のために中国は日本を脅している
 共産党独裁国家である中国の最大の関心事は、国内体制をいかに維持していくかに尽きる。国民の大多数を占める農民戸籍の人々を低賃金労働力として活用、世界の工場として君臨し、太子党など一部の特権階級が巨万の富を築いているのが、今の中国の構造だ。ビジネス雑誌「WEDGE」11月号の「モザイク国際模様」という項に、中国・国家統計局が都市部住民を対象に行った調査の結果が出ている。一戸(標準家庭3人)当たり年収が6万元(約82万円)以上あったのは、全体のわずか5%。都市部でさえこれなのだから農村部も含めれば、この率は恐ろしく低下するはずだ。そして全体の1%にも満たない特権階級は莫大な利益を得て、それを海外に投資している。この非常に矛盾の多い体制の継続のためには、絶えず外部に敵を作って不満と矛盾のはけ口とし、内部の結束を固めていく必要がある。その「敵」とされ、「脅しやすい国」として狙われ、いずれは取り込んでやろうと思われているのが、台湾と日本なのである。なぜこの2国なのか。隣国のロシアやインド、そしてアメリカは核兵器を保有している。そのため中国は核による報復を恐れて、これらの国には手を出せない。
  台湾の国民党は今まで弾圧してきた、台湾の独立を主張する民進党に政権を取られて以来、かつての敵である中国と連携して台湾独立運動の妨害をはじめるなど、中国に取り込まれてしまった感がある。3年半前に李登輝前台湾総統との対談の中で私が「中国はオリンピックのあと分裂する」と話したところ、前総統は「それは違う。オリンピックの前だ」と語った。これは強いアメリカの後押しで、それまでには台湾が独立できると彼は期待して言ったことだと思う。しかし、9・11のテロ以降の米国は、中国が本土に直接アタックできる長距離戦略核ミサイルの配備の強化で相互確証破壊(MAD)の段階に入ったことなどから、「中国の台湾侵攻も台湾独立もいずれも支持しない」と台湾を現状のままで凍結する方針が決定した。台湾は工場などへの投資が「人質」となり、独立派と思われていた財界人もしだいに中国容認の姿勢を取らざるを得なくなってきて、少数与党である民進党の陳水扁政権が降板すれば、中国の恫喝に屈して、一国二制度といった、実質的に中国の一省へと転落してしまう。そうなれば、シーレーンも寸断され中国の対日圧力がさらに増大することは間違いない。今でも中国は、蒋介石率いる国府軍と共産ゲリラとの内戦による犠牲者が大半だったにもかかわらず、すべての犠牲者が日本軍によるものと教え、南京で30万人もの人々を虐殺したと根拠もなく非難し続けている。その目的は中国共産党独裁体制の維持であることを、日本国民はしっかりと見定めるべきだ。
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 日本が韓国同様、核をちらつかせる中国の隷属国に
 このところの好況感は、原油高、資源高を反映したもので、これは、世界の工場となった中国が原油の輸出国から輸入国に転じたことが、その原因と言える。これにより日本で15年間に渡って続いてきた資産デフレに終止符を打つことになった。この原油高はロシア経済にも好条件となっており、11月11日の日経金融新聞によると、ロシアではこの4年で株価が5倍にもなったという。冷戦終結時、破綻状態であったロシアは原油の高騰により一気に力を取り戻してきた。これはKGB出身で、その後継組織であるFSB(ロシア連邦保安局)の長官を務めたプーチン大統領の手腕によるところが大きい。
  私の友人である拓殖大学客員教授の藤井厳喜氏が、日本政策研究センター発行の月刊誌「明日への選択」11月号の「一刀論断」というコラムで、ロシアの事を取り上げている。「9月8日、プーチン・ロシア大統領はベルリンにおり、ドイツとロシアを直接結ぶ天然ガス・パイプラインの契約に正式調印していた」「このパイプラインの特徴は、バルト海の海底を通ってロシアのブイボルグとドイツのグライフスバルトを直接結ぶ事であり」「バルト三国、ポーランド、ウクライナ等」の親米国家群を経由せずに「エネルギー大国ロシアと、ヨーロッパ経済の雄たるドイツの工業力が握手をした」のだ。「プーチン・ロシア大統領の基本構想は、豊富なエネルギー資源の供給を武器として、ドイツ、中共そしてインドとの緩やかな抗米連合を形成し、それを以って米国のユーラシア戦略に対抗する事」だという。
  韓国は「ソウルを火の海にする」との北の威嚇に屈したことと、北の超低賃金労働力を使う魅力、そして北が今後日本から戦前戦後の賠償金として莫大な資金を獲得できることを見込んで北朝鮮と一国二制度の連邦国家をつくるメリットを意識し始めている。
  内部矛盾を抱えている中国も台湾を恫喝懐柔し、モンゴルはアメリカに基地を提供し友好関係を強化している。ロシアは石油を武器にドイツと連携を模索して、世界はかつてとは異なる様相を呈してきており、いずれのケースも一方の当事国は核保有国であり、いずれかの一方には超低賃金労働力がある。独裁国家・中国と民主主義国家・日本が対峙した場合、北朝鮮と韓国の場合と同様に、日本が屈服し、これまでのアメリカの半植民地的状態から、今度は中国の隷属国家へと転落してしまうことを私は危惧している。
  気になるのは、アメリカの動きである。冷戦終結によりかつてソ連の勢力圏であったエリアに手を伸ばし、9・11以降は対テロ戦争という口実のもと対中国包囲網を構築してきたのだが、最近のアメリカはアラブの石油資源の確保に目処がつき、ウズベキスタンから撤退したり、イラクの駐留軍を縮小してイラク戦争の戦後処理の段階に入ってきた。しかし、イラク人同士のイスラム教宗派間の宗教戦争ともいえる自爆テロには手を焼き、イラク戦争を、アメリカが育成したイラク国軍によって行わせようとしている。このイラク、そしてかつてのベトナムでの教訓を踏まえて、今後は、北朝鮮やイランなどですでに保有してしまった核はイスラエルのこともあり黙認してでも、石油資源が少なく直接利害の薄い国外問題への深入りはできるだけ避けようとするのではないだろうか。
  ルイジアナ州を襲ったハリケーン「カトリーナ」被害者の救援が後手に回ったことや、CIA工作員情報漏洩事件で政府高官が逮捕されるなどブッシュ政権は内政でも失点を重ね支持率を落としており、当面は国内重視の動きを取ってくるだろう。共和党・ブッシュ政権も残存任期3年となり、その後に民主党が政権をとれば、クリントン時代のジャパン・パッシング(日本とばし)が再現され、13億人の巨大市場を狙ってアメリカは中国と手を組み、日米安保条約を解消し、日本から駐留米軍を撤退する恐れはないのだろうか。以上のことから、私が予想する10年後の世界情勢はこうだ。ロシアは抗米同盟として大陸ヨーロッパ(独・仏)と手を結び、さらに中国への対抗上、実質的に南北連邦国家になったとも言える南北朝鮮に接近する。中国は台湾を併合し核保有国となったインドと戦略的協調体制を図り、アメリカは日米安保条約を解消して東アジアから軍事力を段階的に撤収するとともに、世界に与えているコミットメントを縮小、対テロ戦争といった非対称の戦いに対し新モンロー主義ともいえる自国の防衛を最優先にし、中国とインドとロシアとはバランスをとりながら友好関係を深めようとする。このような状況下で孤立した日本は一体どうすれば良いのだろうか。
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 「持ち込ませず」を破棄して核の抑止力を持つべきだ
 日本が独立自衛の国を目指すにあたって、どうしても避けて通れないのが、核武装に関する議論だ。第2次世界大戦後の世界情勢は核によって左右されてきた。まずアメリカが核を開発し、広島・長崎に使用。その絶大なパワーに震撼した技術者が核の独占は再度の使用につながると恐れてソ連に核技術をリークしソ連が開発、そのソ連に対抗して中国が開発、それに対抗してインドが開発、そして又それに対抗してパキスタンが開発と核連鎖が進んだ。先に述べたように、一発の核兵器の保有によってすべての軍事力の差がイーブンとなる核の抑止力は絶大である。そのため北朝鮮も自国の存亡を賭けて、せっかく開発した核兵器を手放さないようにするだろう。このように核はますます拡散する。日本には「持たず、造らず、持ち込ませず」の非核三原則があるが、これは国会決議に過ぎず、法律のような拘束力は持たない。NPT(核拡散防止条約)との関係から、造って持つことは無理だとしても、「持ち込ませず」の原則を破棄することは中国や北の核への対抗上、今どうしても必要な政策なのではないだろうか。
  核の抑止力は、それを保有しているかどうかが明らかでない場合に最大限に発揮されるのだから、いつでも核兵器を生産できる技術を日本は確保しその技術の有無を明らかにしないことが重要だ。またすでに確立している固体燃料ロケットの技術にさらに磨きをかけ、いざという場合には即時に海を越えて反撃できるようにするとともに、当面は巡航ミサイルを購入配備する必要がある。台湾では中国への反撃として、上海だけを殲滅する作戦が練られているそうだ。「命の価値」が上昇している都市部、さらにその中核である上海や北京を攻撃されることは、中国にとって大きな痛手である。いつでもこれらの都市を攻撃できるという軍事力を持つことが、台湾にとっても日本にとっても大きな戦争抑止力となるのだ。
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 日本は東京を中心とする富裕インテリ層とその他に二極分化する
 また、世界的な原油価格の上昇も一定の範囲であれば日本にとって有利に働く。オイルマネーの流入によって景気が回復に向かうメリットがあることに加え、世界最先端の省エネ技術を持つ日本では、原油高騰のデメリットを最小限に押さえることができ、比較優位とも言える。
この5、6年の近未来の日本においては資産デフレが資産インフレに転換し、資産価値の上昇が資産効果となって消費を促し、東京圏を中心とする2割程度の富裕インテリ層による消費景気が長期に渡って続き、日本経済は再び繁栄の時代を迎えるのではないだろうか。このチャンスを活かし、日本は科学技術立国を目指し、ナノ・バイオ・IT・人型ロボットなど独創的な技術開発を行っていくのも、核保有に匹敵する戦争抑止力となる。
  もう一つ重要なのは、教育の問題だ。冒頭、日本に強い民族感情があるという報告書に疑問を呈したのは、今の教育現場があまりにもおかしく、正しい日本の歴史すら教えず、多感な中高生を中国の捏造した抗日戦争記念館に修学旅行で訪問させて自虐史観を煽っている。そしてゆとり教育の名の下に、競争をさせない、注意もしない。結果、我慢することができない人間が育ち、成人して社会に適応できずニート化している。また日本人としての誇りを奪うような内容の歴史教科書が堂々と検定に合格して、ほとんどすべての学校で使われている。早急に教育改革を行い、子供達に日本の歴史と民族に誇りのもてる正しい教育を受けさせなければ、この国の未来はない。
  日本を取り巻く環境が激変していく中、中国の属国とならないためにも、この国が早急に手をつけなければならないことは、あまりにも多い。
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