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藤 誠志 エッセイ 〜社会時評エッセイ〜 2004年1月号
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藤 誠志
台湾正名運動に学んだこと 〜中国は分裂し、台湾は独立へと向かう。〜
 道路施設の不備も交通事故死の原因だ
 携行式ロケット弾や仕掛けられた爆弾によってイラクにおける米軍の犠牲者が増え続け、これまでに戦死者の総数は約四百人。クリントン政権時代にソマリアに派遣されたアメリカ軍が、首都モガディシオにおいて戦死した米兵を市中に引きずり回す映像が報道されたことで撤退を余儀なくされたように、フセイン残党やアルカイダはイラクのベトナム化を図りアメリカ軍に毎日少しずつ出血を強いながら、アメリカ世論をあおって撤退に持ち込もうとしている。派遣された自衛隊員に犠牲が出たら、マスコミは早速大々的に撤退論を報ずることは間違いない。日本は自衛隊を派遣すれば戦死者が出ることは覚悟すべきだし、このことをマスコミもあらかじめ想定して、多数の犠牲者が出た場合でも、これが万が一東京での一般市民であったとしても情緒的な報道は控えるべきである。

 イラクでのアメリカ軍の死者が半年で四百人というと凄い数であるが、日本の年間の交通事故の死者は一万人に近く、一ヶ月間でアメリカ軍のこれまでの戦死者の二倍以上の人が亡くなっているのである。しかし、これに対する有効な対策は打たれていない。これまで交通事故による死亡の悲劇の原因は、スピードが速かったとか、よそ見をしていたとか、一旦停止をしなかったとか、酔っ払い運転をしていたとか、すべてを運転者の責任にしてきた。しかし運転者の責任もあるが、道路施設や車両の側にも原因があるのではないだろうか。

 私は世界六十四カ国を回り、かなりの国で空港からレンタカーを借りて各国の道路を走ってみたが、近代国家で日本より酷い道路は少ない。二車線と二車線が合流して二車線となる高速道路、路面の状況もガードレールも信号も道路標識も悪く、慢性渋滞で交通事故も起こりやすい。民主党がマニフェストに「高速道路の無料化」を掲げたことから、高速道路無料化についての論議が活発になってきているが、私は道路はもともと無料が原則であって、日本のような高額料金を取る道路は世界中を探しても無いと思う。料金が高い上に、毎年舗装のやり直しを行わなければ轍が出来て安全な運転ができないような道路を耐久性のある舗装技術が十分確立しているにもかかわらずあえて造っているのは、毎年安定的な補修工事の発注で、天下り先である舗装工事業者の既得権益を守るためである。

 夏の暑さで軟弱になるアスファルトの舗装に大型車の走行で轍ができ、雨が降れば、水がたまってハイドロプレーニング現象が起こり、車がコントロールを失い事故が発生する。大型車両と乗用車の車幅の違いから、片側のみのハイドロプレーニング現象となり、車が滑って横向きとなってガードレールにぶつかる。そのガードレールは、今でもほとんど支柱にワイヤーや鉄板を張ったような形態だ。これでは衝突した場所で車が止まってしまい、大きな衝撃によって乗員が致命傷を負ってしまったり、反対車線へと飛び出し大事故となってしまう。F1レースなどサーキットでの高速走行中の大事故をテレビなどでよく見ることがあるが、「車が四散して駄目かな」と思っていると、ひょっこり車からドライバーが出てくる。ガードレールがコンクリートの連続壁で出来ている場合、四十五度よりも浅い角度でぶつかれば車はガードレールを滑って、大破してもドライバーにダメージが少なくて死亡事故にはならない。どうしてこのように欧米では常識の安全なガードレールに設計しないのか。これでは、ドライバーの命を守るガードレールが、既存のガードレール業者を守るものと言われても仕方がない。吸水性の高い耐久力のある舗装にするとともに、道路の両端が排水のためのくぼみでガードレールへ衝突時に角度が高まる危険な設計を、道路両端の排水溝の両端が高くなるように傾斜した溝蓋を設けて衝突角度を下げる設計に改めるべきである。

 また一般道でいえば、信号機の問題。世界の中でも日本の信号機ほど見にくいものは無い。ほとんどは目線のはるか上にあって、人に対する注意を払って運転しようとすると信号を見落とし、信号に注意を払って運転すると人を見落とす。日本では「信号に目を奪われて歩行者をはねてしまった」という笑えないケースがかなり多いのではないだろうか。人に気を配ったり、周りの車に気を配ったりしていると、いつの間にか赤信号に気づかずに通過してしまうことがある。多くの欧米の国のように目線の位置に信号があれば、ドライバーは歩行者と信号とを同時に視認することができ交差点での事故が減少する。

 道路の欠陥、ガードレールの欠陥、信号の欠陥などを改めるとともに、車の安全に配慮したハイテク装備をすることによって交通事故死者を半減させることができると思う。レーダーを取り付け、前方の車との衝突の危険性を判断して警告し、避けきれない場合はブレーキが自動的に作動する車。GPS衛星を利用したカーナビの原理を応用して他車と自分の車、障害物などの刻々の位置関係を把握し制御する衝突防止システムなどを開発すれば事故はかなり減少する。事故の責任を運転者のみに押しつけ、罰金と減点を科す現在の罰則制度は改めるべきである。

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 特養は現代の姥捨て山
 日本で多くの人命が失われている事象として、交通事故死者の他にも自殺者の問題がある。日本の自殺者は年間約三万人にも上り、交通事故死者の三倍以上にもなるのだ。戦後の日本の高度経済成長は、家族の幸せを犠牲に産業の担い手として、地方の若者を集団就職列車に乗せて大都市に集めた事から始まり偏差値教育により近くの大学より自分の能力で入学できる最も偏差値の高い大学への入学で全国に過疎と過密をつくりだした。現在の繁栄は仕送りと単身赴任で疲れ果てた晩年離婚で一人暮らしの老人と共稼ぎ家庭の鍵っ子、高齢独身者、ホームレスを増やしつづけて個人も家族も地域社会の伝統文化まで破壊して手に入れてきたものである。今、この歪みを是正する時に来ていると言える。「人生における最大の幸せは良い家族を持つことである」と言う言葉があるが日本の高度経済成長の担い手であった団塊以前の世代は今、家族を分断され経済的な問題、病気、人間関係による厭世観や孤独からくる鬱で自殺を強いられている。私はかつて「最大の福祉は大家族制度の復活にある」と書いたが、個人の住まいにも法人と同様な償却を認める税制など、税による誘導で住まい面積を二倍増三倍増でバリアフリー介護設備付き住まいとし、親・子・孫など二世代・三世代で住む大家族制度を復活、プライバシーに配慮した大型の住まい・一つ屋根のマンションのもと、スープの冷めない距離で住み分ければ、子供の世話や一家の団欒などで世代間での相互扶助と知恵の伝承ができるとともに老人自殺・少年犯罪も減少し、一人あたりの住まいコストも削減でき幸せ家族が生まれ少子高齢化対策ともなる。これらのケアや対応によって直ぐにでも自殺者の半減は可能ではないだろうか。大家族制度の復活によりローコスト社会の実現は二十一世紀の課題である。「特養は現代の姥捨て山」といえる、税金である補助金でつくる特別養護老人ホームは民間版公社公団である。「赤ん坊の泣き声と弔いの鐘の音が交わらずして明け暮れした日夜はない」という言葉があるが、赤ん坊の泣き声も弔いの鐘の音も施設でゼロ歳児保育から幼児学習塾、老人ホームまで、本来は家族の役割分担問題を公共的負担で解決しようとすることに問題がある。年金負担もこのまま増え続ければ企業も納税者も破綻をきたすこととなる。今、国に納めて未来に配当を受ける現代の年金制度は米倉の管理をネズミに任せているようなもので、ハイパーインフレともなれば無に帰すこととなり、これは厚労官僚の天下り先の確保のためである。アメリカ人は住まいに貯蓄すると言われるように、所得の向上とともに免税特例を使って買い替えていき、一生に一度の住まいの譲渡益免税を利用して老後を小さな住まいへ買い替えてできた資金で過ごすように、日本でもこのようなことができる税制にすべきだ。

 テロによる死者の出る惨事は大きなニュースになるのは当然だが、人知れず自殺をして行く人が毎年三万人。交通事故によって突然生命を奪われている人が毎年一万人近いという現実。これによる交通遺児と自殺遺児など残された家族の悲しみ、そしてその社会的な負担は数兆円となることを考えれば、この二つの対策を期限を設けて半減させる目標を決めて実行すべきである。そして、それによって社会の安定を目指していくのが政治なのだ。

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 既得権益者が日本を非効率高物価にしている
 今の乗用車の設計思想は、ぶつかった時に車が大きく損傷して、その破壊の過程で衝撃を吸収してドライバーを守るもので、この発想は良いのだが、わずかな衝突でせっかくの車が余りにも簡単に大きなダメージを受けてしまうのはいかがなものか。これが保険料の上昇となり社会的負担となる。少しの衝撃ですぐにへこむようにして、板金・修理業者が潤おうような設計にしているのか?メーカーが車の再購入をさせる目的として軟弱な車体に造っているのか?と疑ってみたくもなる。かつての欧米では前後にぶつけながら駐車スペースを確保するためにも役立った衝撃を吸収するためのバンパーが、今や装飾と化し、少し傷ついただけで交換・修理し、今では本来の目的を認識している人も少なくなってきている。エア・バッグもほとんどの車に装着されてきているが、事故で大変なダメージを受けた車でもエア・バッグが開いている車をほとんど見たことがない。正面からの衝撃で正面にしか開かないようなエア・バッグでは効果は少ないし、かえって危険も多い。エアバッグが必要な衝撃をどこから受けても同時に前後左右から開いてはじめて有効だと思う。このように基本的にはバンパーが車体を守り、バンパーが耐え切れない衝撃に対し、車が破壊していき衝撃を吸収していくことと、あわせてシートベルト、前後左右から開くエア・バッグで乗員を守る設計にすべきなのだ。
 アメリカには無い日本の車検制度。いまどきの車が二年や三年ごとに車検を受けなければ安全に運転できないということはない。車検は車検業者のために存在しているとしか思えない。また現行の運転免許証制度は自動車学校のために存在している。難しい試験を課し、受験のために一カ月間も教習所に通って、何十万円ものお金を取られ、三年ごとに書き換えをさせられるような国は世界でも日本だけだ。アメリカでは自分の車で運転していき、試験場でいきなり試験を受けて合格すればその日のうちに免許証がもらえる。日本の非常に高額な費用負担をして取得する制度が果たして安全運転につながっているのか。アメリカの方が自動車教習所で習わなかったから事故が多いという話は聞いた事がない。
 車の税金も大きな問題だ。購入時の取得税、購入時と車検ごとに必要な重量税、毎年の自動車税、そしてガソリン代の半分は揮発油税と地方道路税と税金まみれで、国際価格の二倍。自動車購入とガソリン購入にはダブル課税といってよい消費税まで発生する。そして自動車税・消費税以外は道路特定財源となり、道路工事業者に流れていく。舗装業者を守るための道路規格、自動車学校を守るための免許制度、車検業者を守るための車検制度、そして板金・修理業者を守るための車の軟弱バンパー。これら各種規制をもって業界擁護を行うことが、政・官・業の癒着の元凶となっている。車を利用する側の立場として望ましいのは全ての道路が無料であり、安全で快適に速やかに移動ができること。乗った車がぶつからない、ぶつかってもダメージが衝撃吸収バンパーで吸収されて本体は傷まない。それを超えるダメージがあっても、ドライバーが死傷者とならないことなのだ。

 天下り構造を明らかにしローコスト社会を実現する
交通に関してもう一つの問題は、日本における物流スピードがあまりにも遅いこと。このことが引き起こす経済的マイナスは非常に大きい。東京区部の車の平均速度は時速約十七キロメートル、車とは到底呼べない状態だ。私がかねてから主張しているように「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」を使って地下に高速道路を造り、山の手線など首都圏の鉄道を地下に移し踏切りをなくす。このインフラ投資によって渋滞の解消と物流のスピードアップをはかるとともに、この需要の創造が結果的に景気回復につながると思う。
 毎年百万人近い人が新しく免許を取得するとして、その経費負担は三十万円を超える。これを三十万円と考えても、三十万円×百万人=三千億円かかっている。この社会的に無駄な費用を安全道路、安全信号機、そして安全車両の開発に充てることを考えるべきだ。増え続ける規制によって乱雑に立ち続ける道路標識と信号機で、規則通りに走れば大渋滞となる。法規をせめて、赤信号でも左折走行を認めるとか、スピード規制をもう少し緩めれば物流スピードが少しは上がる。
 既得権益による無駄の解消の障害となるのが官僚の天下りの仕組みだ。全国の自動車学校には警察OBが天下り、道路公団とその関連会社は国土交通省の天下り先である。信号機や道路標識の会社、車検業者にも、すべて天下り官僚や公務員OBが配属されている。どこの官僚のOBや公務員OBがどういう所に再就職したかということを洗いざらいリストアップすれば、天下りの仕組みと権限の所在が明らかになっていく。そこにメスを入れれば、既得権益の擁護による無駄を一掃できるのではないだろうか。それをきちんと調査し報道するのが第四の権力としての本来のメディアの責任だ。
 戦後一貫として続いてきた法人優位・個人不利の諸制度を個人にやりがいのある制度に改革すべきだ。所得だけを見ればかなりの高レベルなのだが、実際には豊かさが実感できない。この日本の官僚国家体制による非効率で高物価な社会を安全に快適に豊かさの実感できるローコストな社会につくりかえていくことが、今望まれることだ。