2003年 1月号


中国の恫喝は日本の外交に力の背景が ないからである。

今朝の新聞によると、李登輝氏が日本訪問の許可を求めるビザの申請をしたところ、 また中国外務省の孔泉報道局長が「李氏がいかなる肩書であれ、日本を訪れて活動す ることについて中国は一貫して反対する」と横槍を入れてきた。日本政府の権限であ るビザの発給に、いちいちいちゃもんを付けてくることは、日本をいいなりになる国 とみなしているからである。昨年、小泉首相が中国の恫喝により8月15日の靖国神 社参拝の予定を急遽取りやめ13日にしたことの外交的後遺症は大きい。こうした度重 なる中国の恫喝は北朝鮮と同じであり、日本の外交に力の背景がないからである。せっ かく保有している自衛隊の装備もおよそ実戦的でなく、空・海もともかく陸自に至っ ては、ほとんど先の大戦時の兵器レベルの域を出ていない。100万を超える軍隊を持 ち、核や生物化学兵器を搭載するミサイルの照準を日本の大都市に合わせている中国 や北朝鮮に対して、非核・専守防衛を国是とし、長い海岸線を持つ国として対人地雷 が禁止された今、偵察衛星やAMD(AllianceMissile Defense)によるミサイル防衛はもとより、 日本の最新ハイテク技術を動員してアメリカの新型兵器、デージーカッター(気化爆 弾)やサーモバリック(熱圧爆弾)、バンカーバスター(地下施設破壊爆弾)に、ミ サイル付きブレデター(無人偵察攻撃機)にグローバル・ホーク(大型長距離無人偵 察機)にEMP(Electro Magnetic Pulse)弾などに匹敵する新型兵器を開発するとと もに、せめて1万人程度でも精強な隊員を募り、最高の装備と最新の兵器を持たせれ ばこんなになめられない。
 李登輝氏の来日をめぐって、慶大側は「中止を指導したことはない」とし、外務省 も「慶大側から相談はなかった」としている。
 自国の固有の権利であるビザ発給の可否の決裁を回避して大学側に圧力を掛け、発 給の目的である講演会そのものをなくしてしまう。この体たらくは一体どこから来る のであろうか。揚げ句、大学から相談はなかったと言っておきながら、実行委員会が 講演計画却下を決めた情報をいち早く入手していたと語る竹内行夫事務次官のコメン トに外務省の本音が垣間見える。
 私は、一私人として来日する李登輝氏にも毎年、何百万人と何の調査もせずにビザ を発給して来日する外国人と同じ扱いでビザを発給すべきだと思う。
 日本は中国の属国ではない。しかし、中国の圧力に屈し、独立国家として恥ずべき ことをしているのだから、これでは中国の属国と思われても致し方ない。昨年の李登 輝氏の来日は条件付きとは言え、外務省の反対を押し切って森前総理が決断した。李 登輝氏は本当は講演がしたいために日本に来るわけではない。自らの来日を通じて日 本の政府を鍛えようとしているわけで、日本にとっては歓迎すべき有り難いことなの である。


記事の扱いに見る 新聞各社の 報道スタンス

  こんな日本の現実を国民に知らしめる各新聞社の報道スタンスを、同じ日に報道さ れた「李登輝氏のビザ申請」と「拉致被害者の遺骨鑑定」の記事の掲載面とスペース、 写真の有無、別人に『か』が付くか付かないか、といったことで検証してみればまさ に私の予測通りである。
 李登輝氏のビザ申請と鑑定結果
・産経新聞
ビザ(1面・スペース大・写真有)
鑑定(1面・別人)
・読売新聞
ビザ(2面・スペース大・写真有)
鑑定(1面・別人)
・日経新聞
ビザ(2面・スペース中・写真無)
鑑定(43面・別人か)
・毎日新聞
ビザ(2面・スペース中・写真無
  他に、1面にベタ記事有)
鑑定(1面・別人か)
・朝日新聞
ビザ(3面・スペース小・写真有)鑑定(夕刊にのみ1面・別人か)  このように、同じ報道の扱いにも歴然とした差がある。鑑定結果は、朝日に到って は朝刊に記事もなく、夕刊に初めて「別人か」の表現で出ていた。この表を見れば、 これまでの新聞各社の北朝鮮に対する報道スタンスの通りであり、非常におもしろい。 新聞社には、それぞれの価値観、国家観に基づく報道姿勢があるのは当然だが、新聞 を読む人は、そのことをよく理解したうえで新聞の行間を読めと言っている私である が、それは書いてある記事を暗記するのではなく、自らの判断を加えて洞察しなさい と言っているのである
 


BIS規制改正案で銀行にさらなる試練と危機

 8月号のエッセイにおいて私は、「BIS規制は米国の日本弱体化戦略」というタ イトルで、「大手銀行の株安耐久度は日経平均9600円が下限、自己資本比率が健 全性の目安である10%を割り込み資本が足りなくなる下限(8%)は約8000円 である」という記事を取り上げ、ほとんどの銀行の自己資本比率は8%はおろか、す でにマイナスであると断言した。その後も株安傾向は止まるところを知らず、バブル 最安値を更新する下げ幅の勢いは収まりそうにもない。今日の基準で自己資本比率を 計算しても、下限の8%を割り込む直前の水準に近づきつつあり、もはや日本の銀行 は破綻したも同じである。
 そのエッセイの中で、BIS規制こそ日本弱体化計画そのものだと私は極め付けた が、規制導入が招いた現実を見れば一目瞭然である。銀行を締め上げれば日本経済は 失速するという米国金融資本側の思惑通り、空前の地価下落と株安を招き、それに伴 い、企業は債務超過に陥り、銀行は自己資本を減らし、不動産担保融資が不良債権化 し、その不良債権の処理のために銀行の自己資本比率はますます減る結果となった。 さらに、それを公的資金で賄わなければ業務ができなくなり、すべての銀行が実質的 に国有化への道をひた走ることとなる。そして、その国有化された銀行がリスク資産 のカウントゼロとなる国債を購入せざるを得ない構図が出来あがった。その国債バブ ルが崩壊すれば、今度はすべての銀行は破綻し、日本発世界恐慌の引き金を引くこと になると危惧を述べてから、まだ半年も経っていない。
 BIS規制による日本弱体化戦略によって、死に体の日本の銀行に新たな試練が迫 りつつある。バーゼル銀行監督委員会は自己資本比率の「国際決済銀行(BIS)規 制」を現行の8%(国内業務4%)より厳しくする改正案を各国に提示したというの である。リスクの大きい資産を抱えるほど強い財政基盤を求める仕組みで、巨額の不 良債権を抱える大手邦銀は、ますます不良債権の売却を加速するなどの対応を迫られ ることになる。要注意先で現行の2倍、要管理先以下の不良債権については最大 で5.6倍となる。この改正案を基に微調整した上で来年後半に最終決定、2006年 末から一斉適用する方針という。


画期的内需の喚起で景気回復を

  この改正案の提出により、ますます銀行への公的資金の注入が差し迫った課題とな ることは明白である。銀行の貸し渋りが拡大することも間違いない。一方、欧米の金 融資本の日本買いは日に日に強まり、日本の優良資産が、ヘッジファンド、ハゲタカ ファンドと呼ばれる外資に買い占められ、株安と地価安の状況の中で外資の保有する 株式はどんどん増え続けるだろう。このような日本企業のたたき売りが続けば、5〜 6年後には現在20%の外資の保有する株式が40〜50%と過半に迫ることとなる。 これは日本版ウィンブルドン現象とも言える。日本の優良企業の株式がどんどん外資 の手に渡った後、企業の業績が上がっても、それは外資のものであり、その後の景気 回復を手放しで喜べない。資本が外資、社長が外国人、労働者は日本人(いずれそれ も中国人に奪われてしまう)という図式は、日本の国益から考えれば、まさに最悪の シナリオである。今この瞬間にも、優良資産と優良企業の壮大なる乗っ取り劇が演じ られているといっても過言ではないのである。
 それを阻止するためにも、需要を喚起し、景気を回復させることが一番である。私 は前回のエッセイでは「住まい面積倍増計画の実行」を謳ったが、個人が豊かさを実 感できる最たるものは、人生で最も長く滞在する我が家を豊かにすることである。そ ういった身近に実感できる豊かさへの需要を喚起することで景気回復が図られ、それ が日本経済に活力を呼び覚ます基になると私は確信している。
 不動産政策減税と合わせて、ITやバイオなどの先端技術産業分野に対しては研究 開発を含めて投資減税のサポートは欠かせない。日本の建物や設備や機械などに加速 度償却制度を導入することも国際競争力を高める上では必須条件であろう。これまで の画一的な箱モノの公共投資のほとんどは造ってから壊すまでずっと赤字で、固定資 産税も払わず、維持費も稼げず、壊せば産業廃棄物となり、税金の壮大な無駄遣いで ある。どうせ造るなら、孫子の代にまで恩恵を与えるインフラ整備に投資すべきであ る。地下60mを超える深さの大深度地下空間を公共化して利用するのも一考に値す る。それによる渋滞の緩和、物流スピードアップなど、その効用は計り知れない。


高速道路の建設は 経済波及効果を 第一とせよ

  地下空間の利用で思い出したが、先日読売新聞の1面に、建設中の第2東名・名神 の高規格高速道路の必要性をめぐっての記事が出ていた。公団が警察の合意もなしに、 最高時速140キロ設計で建設を続行しているのがけしからんというのである。しか も、1km当たりの建設コストが通常の5倍以上かかり、これも無駄遣いではないかと 噛み付いているのである。
 そして、工事費が高く付くのは、カーブが少なく直線道路が多いことから、トンネ ルと高架・橋梁部分が全体の63%を占めることが影響しているためと書いてある。カー ブが少なく、高低差も少ないのは結構なことではないか。車にかかる税も自動車取得 税に自動車重量税・自動車税のほか、燃料にかかる税金は価格の半額を超えるガソリ ン税などマルチプルにかかるんだから、すべての高速道路を無料にしてすべての道路 からアクセスできるようにすれば、高架の部分が大幅に減り、インターもなくなり工 事費は半減する。そして、談合による高値発注を完全競争入札にすれば工事費はさら に激減する。最高時速を140キロの設計にするのになんで建設前に警察の許可がい るのかも理解に苦しむ。私はこれまで世界64カ国を訪れ、世界の高速道路を走ってき たが、ほとんどが無料であり、ドイツのアウトバーンは最高スピード制限のないとこ ろもあり、私も220〜230キロで飛ばしたこともある。ドライバーの高速運転マ ナーがいいので事故も少なく、工事箇所も少なく、渋滞もない。毎日1000キロ程 度の連続運転でも疲れない。比べて日本は道も悪ければ、スピードも出せず、20〜30 キロも走れば毎年やり直す補修業者のための工事箇所があり、おまけに100キロ規 制で高速優先のマナーも育たない。140キロ設計で事故が9%増えるとあるが、そ れは低速車が高速車へ車線を譲る習慣のないことも事故が多くなる原因で、クロイソド曲線と言われる曲がりくねった道路で、毎年補修をしないと轍が出来て、雨の日に はハイドロプレーン現象を起こす現在の高速道路と比べて、140キロ規制にすれば 事故が9%増えるというのは憶測にすぎない。車も動かなければぶつからない。私は,事故によるロスとその経済効果を勘案しないで書く記事を残念に思う。この高規格第 2東名・名神高速道路は、物流スピードのアップとともに、災害に対するバイパス機 能という意味からも、是非必要であると思っている。日本は都市部の高速道路があま りにも少なすぎるし、設計企画のレベルが低すぎる。


ハイパーインフレと超円安になる日が やって来る

 日本の道路行政が悪いのは利用者のことを度外視して、自分たちの天下り先のこと しか考えない官僚がいるからである。こうした不正や馴れ合い、談合、高コスト発注 にメスを入れるのが本来マスコミの役割であるのに、日本のマスコミは第4の権力としての機能を果たしていない。私はエッセイで教育と官僚機構、マスコミのありよう を痛烈に批判してきたが、本当はマスコミが自らの姿勢を含めて閉塞社会の元凶であ る天下りで始まる政・官・業癒着の構造を糾弾していかなければならないのではなか ろうか。
 バブルが崩壊した1990年以降、土地と株式合わせて1158兆円の資産価格が 目減りしたとされている。その割には、給料もさほど減らず、ボーナスもそれなりに 支給され、失業者も激増していないで、物価だけ下がり続ける現状デフレは一見暮ら しやすいように思える。しかし、マグマのように見えないところで溜りつつあるヒズ ミはすでに限界点を超えようとしている。企業も個人も国も含み赤字を拡大させ、借 金を返さず棒引きにして不良債権と国債を積み上げてきたこの10年は、いずれ国債 バブルの崩壊による急激なインフレと超円安によって、そのツケを払わされることと なり、そのツケの多くは庶民の家計から払わされることは間違いない。