
旧皇族出身ならではの視点で、天皇や皇族に関する冷静な著作を次々と発表、各方面からの注目を集めている竹田恒泰氏。『天皇は本当に主権者から象徴に転落したのか?』という論文で、アパグループ第2回「真の近現代史観」懸賞論文で最優秀藤誠志賞を受賞した竹田氏に、特例会見問題などで見られる民主党政権の危険性、日本変革のきっかけなどをお聞きした。
元谷 今日はお忙しい中、ビッグトークへのご登場、ありがとうございます。また、第2回「真の近現代史」懸賞論文での最優秀藤誠志賞受賞、おめでとうございます。
竹田 ありがとうございます。大変光栄です。
元谷 第1回は現職の航空幕僚長である田母神氏の「まさかの」応募があり、これが最優秀賞を受賞したのですが、「内容が村山談話に反する」と田母神氏の更迭騒ぎとなり、懸賞論文自体が一気に人々に知られるようになりました。審査委員長の上智大学名誉教授、渡部昇一氏をはじめとした審査委員のみなさんが、審査の段階では応募者を知らないまま採点を行い、最終の審査委員会ではその採点を基に応募者を明かして協議をして入選者を決定したのですが、応募者を知らない採点の段階で、田母神氏の論文はすでにトップだったのです。今回も同じ方法で審査を行い、明治天皇の血を受け継ぐ竹田さんの論文とは知らずに、審査員一同がまたしてもトップの採点をしました。私はこのことに、なにか運命的なものを感じます。
竹田 運命ですか。
元谷 はい。アパグループの年頭所感として今年私が発表したのは、『激動の今、時代の先達として、選ばれた者の責任を果たすべく、限りないロマンに全力でトライし、願望は自ら実現する』という言葉でした。このような懸賞論文制度を作り、募集できるのも、私がワンオーナーの創業経営者だからこそであり、第1回目の懸賞論文があれだけ話題になったのは、現職の航空幕僚長だった田母神氏が政府見解と異なる正論をはっきりと述べる論文で応募したからで、そして今回最優秀賞になった「天皇は本当に主権者から象徴に転落したのか?」の論文は、皇族の流れを汲む竹田さんにしか書けないものです。それぞれが時代の先達として、選ばれた者として、自分にしかできない責任を果たしてきたということではないでしょうか?これを運命だと感じたのです。こういう思いから、今年の年頭所感の言葉を考えたのです。
竹田 わかります。私も今回の受賞に関しては、代表と同じような感覚を持っています。明治神宮で入選祈願の禊を行った直後に、代表から最優秀賞受賞のご連絡を携帯電話にいただいたことに始まり、去る12月8日の明治記念館での授賞式の直後に、中国の習近平副主席と天皇陛下の特例会見問題が起こったり。懸賞に応募させていただいた文章は、私の憲法学者としての最初の論文でしたし、特例会見問題について12月15日の産経新聞に掲載された一文は、新聞に初めて書いた憲法論でした。何か、明治天皇の御心によって、「憲法学者として戦う」運命へと導かれているような気がしています。
元谷 そうです。日本もそろそろ真っ当な国に生まれ変わらないとだめ。私や田母神さんや竹田さんなどの手によって、日本が変わるタイミングが来たということではないでしょうか。この流れで、私はロシアのサンクトペテルブルクを訪れて、張作霖爆殺ソ連特務機関犯行説を発表したドミトリー・プロホロフ氏を日本に招聘したり、インドネシアを訪れて、当地でインドネシア独立戦争に参加した元日本兵・宮原永治氏と対談したりと、これまでとにかく「日本が悪い」とした、さまざまな歴史が捏造されてきた状況を打破しようと試みてきたのです。竹田さんが論文に書かれていたように、『余りに大きな嘘は、嘘の存在自体に気付きにくいことがある』のです。日本の近現代史は、すべて大きな嘘によって構成されていて、まるで『裸の王様』のような状況です。素直な目で見れば間違っているのがわかるのに、戦後一貫して続けられた間違った教育や報道によって歪んだ見方が定着し、正しいことを主張しにくい社会になってしまっているのです。
竹田 その通りです。
元谷 しかし特例会見問題の時の民主党・小沢幹事長の発言は酷かったですね。記者に向かって、「キミ、憲法を知っているのかね」と言うのですが、言った本人が一番憲法を知らない(笑)。
竹田 憲法解釈を間違えています。
元谷 外国要人との会見は「天皇の国事行為」だと言うのですが、ここからして勘違い。
竹田 知らなかったのでしょう。恥ずかしいですね(笑)。外国要人との会見は国事行為ではなく、公的行為です。
元谷 あの言い方といい、小沢氏の人間性が疑われる記者会見でした。
竹田 小沢氏が主張するように、時の政権が好き勝手に自分の為や政治の為に天皇を利用し始めたら、大変なことになります。これは日本を滅亡に導く暴挙ですよ。
元谷 小沢氏も「言い過ぎた」と反省しているのではないでしょうか?見過ごしてはいけないと思うのですが、メディアの追求は非常に鈍いですね。
竹田 自民党も手ぬるいですよ。
元谷 野党としての自民党は、存在感ゼロです。民主党との対立軸が、まったく見えてきません。真正保守を貫く総裁をきちっと選んでいれば、まだ状況は変わったと思うのですが…。
竹田 自民党の生き残る道は、真正保守にしかないと思います。この点から、特例会見の小沢発言は絶好の攻撃ポイントだったと思うのですが、本当に自民党は手ぬるかった。
元谷 野党経験が少ないから、敏感な対応ができなかったといったところでしょうか。まだ民主党も自民党も、与党慣れ、野党慣れしていないのでしょう。
竹田 国の形の話になると、民主党政権は問題点だらけです。今年は参議院議員選挙の年ですが、解散がなく6年間腰を据えて国政に取り組める参議院議員こそ、もっと目先ではなく将来の天下国家の在り方をしっかりと議論していただきたいものです。そうでないと、我が国は亡国となります。
元谷 衆議院議員に立候補して、当選できなかった人が参議院議員になるケースもあります。じっくりと考えられる人が、参議院議員になっていないことが多いのではないでしょうか。とにかく民主党政権は、今後も心配です。そもそも選挙当選互助会ともいえる組織で、議員の政策・考えがばらばら。小沢さんを見ていればわかりますが、政権をとってこの国をどうしていくかではなく、どうしたら選挙に勝って政権がとれるかしか考えてこなかった政党です。だから政策も人気取りのものばかり。日本のためには、「がらがらぽん」で政界再編、政策で一致する人々が集う政党にすべきなのです。また歳費など議員にかかる費用や議員数そのものも、大幅に削減できるのではないでしょうか。
竹田 そもそも参議院は衆議院の暴走を牽制するのがその役割です。参院も「衆愚」に陥るのなら、存在する必要はありません。参議院の国会開催費だけでも、年間約400億円もかかっているのですから。また代表がおっしゃる通り、政党は志を同じくするものが集まるべき。そうでないと、有権者にとっての選択肢がなくなります。昨年の総選挙での自民党対民主党は、バラマキA対バラマキB。違いはほとんどありません。代表のような日本の将来を憂う人々が、どこにも投票できない。つまり民主主義が機能していないのです。
元谷 去年の選挙では、民主党支持ではない人まで、ちょっと自民党にお灸を…とか、変化を求めて…とかで、民主党に投票してしまったのでしょう。しかし政権を取った民主党は、連立している弱小政党の社民党や国民新党にすっかり振り回されています。国民の多くは社民党や国民新党に投票したわけではないですから、この状況は変でしょう。やはり政界再編が必要なのです。また民主党内では、「小沢圧政」のせいで自由な発言が憚られるようになっています。小沢氏の弊害は他にもあります。昨年末の韓国訪問の際に、彼は天皇訪韓にまで言及している。これは明らかに行き過ぎです。
竹田 おっしゃる通りで、特例会見も相当な問題なのですが、訪韓はさらに深刻な問題を引き起こすかもしれません。特に危ないのは、晩餐会でのお言葉です。これは天皇陛下が自らお書きになるものではなく、内閣が起草するものです。今の内閣が天皇のお言葉を起草する場合、それがどんな内容になるのか。特例会見の小沢氏のような感覚でお言葉が書かれたら、それこそ国家の一大事です。どんな場合でも天皇を政治利用しないというのが、戦後の大原則であり、これまできちんと守られてきたのです。それを小沢氏のように、「天皇は内閣の言いなりに動けばいい」というのは、どうも…。
元谷 特例会見に関する記者会見では、そのようなトーンでした。
竹田 そんな民主党の政権がお言葉を起草するのです。考えただけでも恐ろしいですね。
元谷 しかし、このままですと、その「恐ろしい事態」が現実になる可能性が大です。
竹田 そうなのです。このように鳩山首相や小沢幹事長のやり方は醜いのですが、かといって羽毛田宮内庁長官を英雄扱いするのもおかしなことです。彼は「こういうことが二度とあってはいけない」と言いますが、口先だけ。特例会見を阻止するために、羽毛田長官は何もしていません。最後の最後まで「できません」と、体を張ってでも断り続けるべきだったのです。官房長官は上司だから、結局従うしかなかったというのが羽毛田氏の弁明です。確かに法律的にはその通りです。しかし実務でみると、長官が拒否していることは進まない。総理や内閣が宮中に直接指示することはできないのです。
元谷 解任でもしない限り、鳩山首相はどうしようもないと…。
竹田 ところが、総理には宮内庁長官の更迭権はありません。これは以前安倍元首相にお聞きしました。大臣は直接総理大臣が任命しますから、総理が更迭もできるのですが、宮内庁長官は官僚が出すポジションなので、総理に任免権、罷免権はありません。であればなおさら、私は羽毛田長官は特例会見を断固拒否すべきだったと思うのです。それをやらずに、批判会見だけを開くのは、男気がない行為ではないでしょうか。
元谷 宮内庁長官の更迭権の件は、あまり一般には知られていませんね。まさに大きな嘘が世の中にはびこっている感じを持っています。そんな嘘を子どもの時は学校で学び、大人になってからは報道から吸収し続けると、何が本当で何が嘘かがわからなくなってくるのでしょう。しかし、あれだけすべてのメディア、政党や政治家、官僚らから批判された田母神氏は今や英雄で、年間300回を超える講演を行い、本のベストセラーを連発しています。どうもメディアの報道と世論とに、かなりの温度差があるようです。
竹田 なるほど。そうですね。
元谷 田母神論文で東京裁判史観の嘘が暴かれて、それが1年経っても衰えない田母神氏の人気につながっているのだと思います。そして政権交代後のいいタイミングで、竹田さんの受賞となりました。天皇制のことを突っ込んで書き、さらに読者の納得を得られるのは、竹田さんだからこそです。他にできる人はいないのですから、時代が求めた選ばれた人ということで、これからもどんどん発信を続けていって欲しいですね。
竹田 わかりました。がんばります(笑)。これまでは、左翼は論理的でクール、そして右翼は左翼に対して感情的に言い返しているだけどいうイメージが強かった。これからの右翼は感情を抑えて、論理的に。「頭は冷静に、気持ちは熱く、そして論理明解に対峙」です。そんな中、代表がやってらっしゃる懸賞論文は、冷静な議論を行う風潮を築く、素晴らしいきっかけだと思います。
元谷 ありがとうございます。しかし竹田さんは本当に論理明解ですね。先日の表彰式の時の特別講演も、非常に良かったですよ。特に憲法学者の間では常識という「今上天皇は第2代」というお話など…。少し解説をお願いできますか(笑)。
竹田 はい(笑)。慶應義塾大学で講師として授業を行うようになって、改めて憲法の基礎をしっかり学ぼうと専門書を片っ端から読んでいたのです。そうすると、驚くような記述ばかりに遭遇しました。その一つが、今の日本国憲法は革命憲法であって、天皇は憲法制定の段階で一旦途切れ、昭和天皇が初代の天皇になったというのです。一般的には誰もが受け入れないようなこんなばかげた説が、憲法学では通説になっているのです。
元谷 ちょっと信じられないことです。
竹田 政府も大っぴらには「今上天皇は第2代」とは言いませんが、根本的にはこの通説に基づいた見解を出しています。左翼的な憲法解釈の大元がこの革命憲法説で、私としては到底納得できるものではありません。
元谷 もう一つ、講演で印象深かったのは、なぜ日本では自らの国の歴史を「国史」と呼ばず、「日本史」と呼ぶかという部分です。聞いてはじめて気づきましたね。「日本史」は、「アメリカ史」とか「中国史」同様、確かに外国人からの呼び方です。
竹田 これも大きな嘘の一つなのです。あまりにも大きくて、誰もが気づかないのです。
元谷 目からウロコです。
竹田 歴史に関してさらに言えば、建国の神話を教えないと、日本人ではなくなります。今のような教育をしていては、100年後に日本人が残っているかどうか、非常に心配です。
元谷 確かにその通りです。しかし100年、もつかどうか。そうはならないために、この10年ぐらいで、日本の方向転換を行わなければならない。
竹田 おっしゃる通りです。
元谷 私は、今にも中国に取り込まれそうな日本を見て、ロシアは危機感を抱いていると思うのです。ですから歴史小説家のドミトリー・プロホロフ氏を通じて、80年以上前の張作霖爆殺事件はソ連特務機関の犯行だと告白しました。イギリスも同じです。張作霖爆殺に関しては、イギリス陸軍情報部の極東課が、速報として本国に「ソ連特務機関の犯行」という連絡を入れています。その後日本が自らの工作だと認めたので、イギリス本国は再度の調査を指示しました。再調査でも結論はソ連の仕業で変わらず。その根拠は、使われた火薬がソ連製だったことです。これらの報告書は最近公開されて、誰でもロンドンにあるナショナル・アーカイブという施設で閲覧することができます。なぜロシアとイギリスが時を同じくして張作霖事件の真実を暴露したのか。明らかに、勢力を拡大し続ける中国への牽制です。日本はこの両国からのシグナルを、巧みに利用するべきです。
竹田 ロシアもイギリスも、日本にちゃんとした独立国家としての道を歩めと言っているのでしょう。歴史を取り戻して、本来の日本の姿に立ち返る大きな流れができつつあるのではないでしょうか。
元谷 朝日新聞などが中心となって、その流れを必死に止めようとしています。今にも綻び、崩壊しそうな既存の体制を懸命に繕っているのが、目に浮かびます。
竹田 人類の歴史を振り返ると、価値観の転換期に古い考えを持った人々は凶暴になるのです。例えば教会と近代合理主義がせめぎ合ったヨーロッパの近世においては、魔女裁判によって多くの人々の命が奪われました。
元谷 気をつけなければならないですね。
竹田 終戦から65年が経過して、ようやくあの時代のことを「歴史」として冷静に分析できるようになったのでしょう。これからどんどん歴史認識が改まっていくのではないでしょうか。私は今は明治維新以来の変革の時代だと思うのです。維新の時は20〜30代の若者たちが、日本の形を作りました。坂本龍馬のような若者一人ひとりが、日本の在り方を大きく変えたのです。これはすごいことだったと思います。
元谷 若い人の方が柔軟性があるからでしょうか。元台湾総統の李登輝氏が言っていましたが、日本人では今60歳前半ぐらいの層の考えが一番おかしい。変な教育を受けた全共闘世代ですね。上下とも、ここから離れるにしたがって、良くなっていくと。確かに瀬島龍三氏や小野田寛郎氏、インドネシアで対談させていただいた宮原永治氏など、昔の日本には素晴らしい人々がいたのです。全共闘世代がリタイヤするこれからは、どんどん世の中が真っ当になっていくのではないでしょうか。
竹田 私も大学で20代の若者たちを教えていますが、彼らは知らないだけで、余計なことに染まっていません。だから興味を持つと、乾ききったスポンジが水を吸うように知識を吸収していくのです。今回の懸賞論文でも、中学3年生の加藤さんが学生部門の優秀賞を受賞しましたし。
元谷 中学生でも非常に立派な論文でした。他の若い人の刺激になればいいですね。
竹田 代表は、若者に飛躍の機会を与えてくださっています。素晴らしいことです。
元谷 未来に期待が持てる今回の懸賞論文でした。今後も続けて、ますます質量ともに向上させていきたいですね。最後にいつも「若い人に一言」をお願いしています。竹田さんもまだまだお若いですが(笑)。
竹田 日本のことをしっかりとわかって欲しいですね。国際人というと外にばかり目が向きがちですが、真の国際人とはヨーロッパやアメリカを知っているのではなく、自分の生まれた民族の歴史がわかっている人だと思うのです。神話も含めて歴史を、そして日本人の気質などを熟知している真っ当な日本人になって欲しいです。
元谷 わかればわかるほど日本のことが好きになるはずです。海外に行くと、どこの国の人も誇らしげに自分の国のことを話しますよ。
竹田 日本はかっこいいということに気づいて欲しいですね。
元谷 その通りです。今日はありがとうございました。
竹田 ありがとうございました。
竹田恒泰氏氏
1975(昭和50)年旧皇族・竹田家に生まれる。明治天皇の玄孫にあたる。慶應義塾大学法学部を卒業後、初めて著した『語られなかった皇族たちの真実-若き末裔が初めて明かす「皇室が2000年続いた理由」』(小学館)で、2006(平成18)年第15回山本七平賞を受賞。他の著作は『怨霊になった天皇』(小学館)など。現在慶應義塾大学大学院法学研究科講師。